その優しい歌声で我が国でも多くのヴォーカル・ファンから愛されたオーストラリア出身のヴォーカリスト/ピアニスト、ジャネット・サイデルが8月7日にシドニーの病院で逝去しました。享年62歳。
ジャネット・サイデル:オーストラリア出身のヴォーカリスト / ピアニスト。
1980年ごろからベース奏者の兄デイヴィッドとシドニーを拠点に活動を始める。デイヴィッドが主宰するレーベル、La Bravaから92年にファースト・アルバムLittle Jazz Birdをリリースし、本国では現在に至るまで17枚のアルバムを発表している。
カルテットやオーケストラとの共演も行っているが、チャック・モーガン(ギター)とデイヴィッド(ベース)とのトリオでの活動をメインとし、このトリオで取り組んだドリス・デイのトリビュート・ショウは地元オーストラリアで人気のプログラムとなった。その後このトリビュート・ショウをもとにしたCDも発売されている(「ドリス&ミー」)。他にもコール・ポーター、ブロッサム・ディアリー、ペギー・リー、ビリー・ホリデイ、ヘンリー・マンシーニなどのトリビュート・ショウも好評を博している。
彼女のアルバムは、世界各国でも発売され評判となり、イギリス、アメリカ、ヨーロッパ、中東、東南アジアなどでもツアーを行っている。「Penguin Guide to Jazz on CD 2006」(UK)では「オーストラリア・ジャズ界のファースト・レディ」と称された。
我が国へは2001年に“神戸国際ジャズ・フェスティバル”で初来日し、その後全国のクラブ・サーキットや2006年、2008年の“富士通ジャズ・エリート”(五反田ゆうぽーと他)などで日本の聴衆にもすっかりお馴染みになった。アルバムも2002年の「ベッドで煙草はよくないわ~ペギー・リーへ捧ぐ」から2013年の「ある恋の物語~想いは遠く」まで14枚が発売されている。特に2005年にリリースされた「マナクーラの月」は“スイング・ジャーナル”誌のヴォーカル・チャートで3ヶ月連続の1位に輝き、一躍脚光を浴び異例のロング・セラーとなった。本作はオーストラリアでも「Winner of the Bell Award for Jazz Vocal CD of 2006 」を受賞した。また2007年11月に発売された「シャレード~スウィート・マンシーニ」は、“ジャズ批評”誌にて2007年度ディスク大賞銀賞に輝くなど、その心安らぐ優しい歌声で若いリスナーから年配のファンまで幅広く愛される数少ないシンガーとなった。2009年9月には、初のベスト・アルバム「スウィート・デイズ」が発売。アルバムは大のジャネット・ファンである水森亜土さんの書き下ろし作品がカヴァーを飾り話題となった。そのワン・アンド・オンリーなジェントル・ヴォイスは資生堂、花王、NTTなどのTVCMにも起用されその歌声がお茶の間にも流れた。
昨年末からジョージ・ガーシュウィンのトリビュート・コンサートを展開し4年ぶりのニュー・アルバムの制作も予定していた。

カナダの歌姫、ダイアナ・パントンのニュー・アルバムが9月23日に発売決定。前作「アイ・ビリーヴ・リトル・シングス」からは2年振りのスタジオ録音作。いつも素晴らしい演奏でダイアナをサポートするドン・トンプソン(arr, p, b, vibs)、レグ・シュワガー(g)に加え、本作にはギド・バッソ(flh, tp)、フィル・ドワイヤー(sax)も参加。
四季おりおりの情景をテーマに、初の2管編成による60年代のジョージ・シアリングを彷彿とさせるシックでジャジーなサウンド、それに寄り添うダイアナ・パントンのスウィートな歌声が心優しき大人たちの心を癒す。ときめく春への思いを歌った「ゼイ・セイ・イッツ・スプリング」、ジョアン・ジルベルトでお馴染みの気怠いサマー・ソング「エスターテ」、ジョージ・シアリングがヒットさせた「9月の雨」、ジュリー・ロンドンも愛した「クラウディ・モーニング」、アンリ・サルヴァドールがボリス・ヴィアンと共作した「ヴァカンスの終わり」などよく知られたスタンダードから知る人ぞ知る隠れ名曲までをしっとりと歌い上げる。
シーズンズ ~わたしの四季 / ダイアナ・パントン
2017.9.23
MZCF-1358 (MUZAK/fab.)
2,400円+税
●日本先行発売
曲目:
1.ゼイ・セイ・イッツ・スプリング
2.ヘザー・オン・ザ・ヒル
3.アップ・ジャンプド・スプリング
4.ザット・サンデイ・ザット・サマー
5.エスターテ
6.マンハッタン
7.ヴァカンスの終わり
8.9月の雨
9.ディス・オータム
10.セプテンバー
11.クラウディ・モーニング
12.アイ・ライク・スノウ
13.バイ・ザ・ファイアーサイド
メンバー:
ダイアナ・パントン(vo)
ドン・トンプソン(b, p, vibes, arr)
レグ・シュワガー(g)
ギド・バッソ(flh, tp)
フィル・ドワイヤー(sax)
録音:2016年8月/ トロント
移り行く季節と変わらぬ私の想い
ホリー・コール、ダイアナ・クラールに続くカナディアン・ディーヴァ、ダイアナ・パントンの2年振りとなる待望のニュー・アルバム。四季おりおりの情景をテーマに、初の2管編成による60年代のジョージ・シアリングを彷彿とさせるシックでジャジーなサウンド、それに寄り添うダイアナ・パントンのスウィートな歌声が心優しき大人たちの心を癒す。ときめく春への思いを歌った「ゼイ・セイ・イッツ・スプリング」、ジョアン・ジルベルトでお馴染みの気怠いサマー・ソング「エスターテ」、ジョージ・シアリングがヒットさせた「9月の雨」、ジュリー・ロンドンも愛した「クラウディ・モーニング」、アンリ・サルヴァドールがボリス・ヴィアンと共作した「ヴァカンスの終わり」などよく知られたスタンダードから知る人ぞ知る隠れ名曲までをしっとりと歌い上げる。
2015年の秋、ダイアナ・パントンが初の来日公演を行うということで、福岡に住む音楽仲間(僕と同じように彼女に夢中である)を誘って、丸の内のコットクラブへ足を運んだ。ステージの目の前のテーブルを陣取り、カクテルを片手に至福のひと時を過ごし、終了後にお互いに顔を合わせて、思わずこぼれた言葉は「やっぱり彼女は理想的なヴォーカリストですね」だった。吐息をつくような繊細な歌声と、内なる想いを秘めた表情に、その場のすべてのオーディエンスは魅了されていた。僕は、ダイアナの歌声に触れるたび、胸の内が微熱を帯びたように温かくなる。そして心のままに、耳を澄ませて、いつまでも聴いていたいと思わせる。
『Solstice -Equinox』は、「夏至」「冬至」と「秋分」「春分」を表現する単語を用いたタイルで、つまり、四季を歌った作品。移りゆく季節と共に、ジャズ・スタンダードや、知られざる名曲たちが、親密なアンサンブルとしっとり溶け合って紡がれていく。選曲は彼女と、ドン・トンプソンが手掛けたという。アンリ・サルヴァドールの「La Fin Des Vacances」や、パティ・マクガヴァーンの「I Like Snow」を選ぶ当たりに、彼らのセンスの良さを感じてしまう。それに、ジョアン・ジルベルトもカヴァーした、ブルーノ・マルティーノの「Estate」や、バルバラの「Septembre」といったヨーロッパの古い曲も、実にダイアナの歌声に似合っている。その「Septembre」は、“Queljolitemps(なんと美しい季節)”というフレーズを歌詞に置き、移ろう季節の中で、自然が変化したり、恋人たちの気持ちが揺れ動いたりする様子を描いた曲。転調するメロディーが静かに響きわたる。
ふたたび、この秋に、ダイアナが来日する知らせが届けられた。吐息まじりで、“美しい季節”を歌う、その姿を観ることができれば嬉しい。
山本勇樹
2年振りの来日公演も決定!
ホリー・コール、ダイアナ・クラールに続くカナダの歌姫
キュートなスウィート・ヴォイスで彩るスペシャル・ステージ
10月10日(火)・11日(水)
丸の内コットンクラブ
℡ 03-3215-1555
ダイアナ・パントン(vo), レグ・シュワガー(g), ニール・スウェンソン(b)

日本経済新聞(2017年7月22日付)にてピアソラ没25年の記事が掲載されました。
~ジャンルや国境の壁を悠然と超えた音楽家に、時代がようやく追いつきつつある。