平林牧子の新作、ボブ・ロックウェルとのデュオ・アルバムが登場!
平林牧子&ボブ・ロックウェル『ゴング』
デンマークを拠点にグローバルな活動を続けるピアニスト、平林牧子の最新アルバム
北欧から彗星のごとく現れピアノ・ファンを虜にした平林牧子とデンマーク在住の米国サックス奏者、ボブ・ロックウェルとによるイノセントなデュオ・アルバム。
人生は出会いに満ちている。さまざまな人やもの、こととの出会いは、それ自体が生きるということなのかもしれない。東京に生まれ、香港で育ち、青春期を東京で過し、合衆国に渡りボストンで学んだ平林牧子は今コペンハーゲンで暮らしている。そんな半生を彼女は「カルチャー・ショック(=異文化接触)の連続」と振り返る。生活環境の全般にわたる異文化との接触は、小学生にとって「ショック」そのものだったはずだが、それをおそらく少女ならではの自然体で克服したしなやかさの延長に、今日の音楽家・平林牧子の姿勢を見ることは牽強付会に過ぎるだろうか。幼い頃からクラシック音楽と身近に親しんでいた平林牧子にとって、ジャズもまた異文化との出会いだった。生身の人間と手を携えるようにして現れたジャズが機縁となって、ギタリストの夫の故国デンマークに移り住んだのは1990年のこと。ヨーロッパ・ジャズの中心のひとつであるコペンハーゲンは、さまざまな出会いを彼女にもたらし、それらの出会い自体が平林牧子の音楽=ジャズをより深く、より広く形作ってきた。夫君のモートン・カーゴー然り、すぐれたパーカッション奏者マリリン・マズール然り、そして本作の共演者ボブ・ロックウェルもまた然りである。1945年オクラホマ州で生まれ、ミネアポリスで育ったサックス奏者ボブ・ロックウェルは、ニューヨークでのベン・シドラン、フレディ・ハバード、サド・ジョーンズ、メル・ルイスらとの共演体験を経て1983年にコペンハーゲンに移住する。平林牧子との出会いはおよそ10年前のこと。以来Grey To Blue名義のアルバムやライヴ・セッションに加えてデュオで演奏する機会も幾度かあって、深い理解と共感の下に互いの音楽を探究してきた。異邦人の二人が北欧の都市で出会ったことのひとつの成果といえる今回のアルバムのために、平林牧子は10編の美しい曲を書いた。「Fukushima Suite 」と題された冒頭の3曲は震災からさほどの時日を経ないうちに書き下ろされたものだが、異郷にあって故国に思いを馳せる作曲者の心象に沿いつつさらにその先まで届く共生の感覚を、滋味溢れるサックスの響きの内に感じとることができる。あの日極東で起きた大きな災いは、共に地上に生きるものにとって遠い出来事ではない。アルバムの最後にはホレス・シルバーの名曲「Peace」が置かれた。平林牧子のアルバムにジャズ・スタンダードが収録されるのは珍しいことだが、ここではシルバーのメロディから着想した平林によるカウンター・メロディが先行して、まったく何の違和感もなくアルバム「Gong」全体を構成する流れに溶け込んでいる。その曲名もまた「Gong」のラストの余韻にふさわしいものである。
幾重にも重なりあった出会いの澄んだ結晶として、今、ここに「Gong」がある。・・・ライナー・ノーツより
メンバー
平林牧子(piano)
ボブ・ロックウェル(tenor sax, soprano sax)
録音:2015年1月/ コペンハーゲン
★ドイツ直輸入盤+日本語解説
曲目:
1. ビニース・ザ・シーベッド
2. インヴィジブル
3. サーキュラー(1-3福島組曲)
4. ピース・オブ・メイ
5. パドルス
6. シリアル・アタック
7. ダイ・ダイ
8. ゴング
9. スティル
10. ボビット
11. ピース